お知らせ

明興双葉株式会社(本社:東京都中央区 代表取締役会長兼社長:是松孝典 以下「明興双葉」)と株式会社由紀精密(本社:神奈川県茅ヶ崎市 代表取締役社長:大坪正人)は、従来の実用ニオブチタン(NbTi)合金よりも特性に優れた金属間化合物を用いた新しい超伝導ワイヤー開発に取り組んできた。 この度、国立研究開発法人物質・材料研究機構(本部:茨城県つくば市 理事長:橋本和仁 以下「物材機構」)との共同開発として、ニオブスズ(Nb₃Sn)超伝導ワイヤーの極細化に取り組み、外径50ミクロン(1ミクロンは1,000分の1ミリ)で7,000メートル以上もの量産規模の無断線製造に成功した。
今回のニオブスズ(Nb₃Sn)超伝導ワイヤーの製造にはブロンズ法と呼ばれる製法を用いた。これまでのNb₃Snワイヤーの外径は1.0mm程度が一般的で、特に0.1mm未満の極細化は技術的にも製造が難しく前例がなかった。外径を髪の毛より細く極細化することに成功したことで、脆いNb₃Snワイヤーがグラスファイバーのように柔軟になり特性劣化を防ぐことができ、取り扱いが格段に簡単になるとともにコストも削減される。今後、加速器や核融合炉、次世代モビリティ等の幅広い分野への応用展開と、さらには、現在はNbTi超伝導ワイヤーがほぼ独占しているMRI市場への新規参入の期待が高まっている。

ブロンズ法は、ブロンズ(Cu-Sn)合金とニオブを複合加工する製法で、1970年ごろに金属材料技術研究所(現・物材機構)の故太刀川恭治博士等により見出された。ITER(国際熱核融合実験炉)や高磁場NMRスペクトロメータ等に広く実用化されている。しかしこれまでのNb₃Snワイヤーは、多芯構造であるものの外径は1.0mm程度が一般的で、特に0.1mm未満の極細化は技術的にも製造が難しく前例がなかった。外径1.0mm程度のNb3Snワイヤーは応力を受けると特性が大きく劣化し、コイルの磁場精度や特性の安定性に改善が求められていた。 今回、物材機構が超極細ワイヤーの概念設計を行った。原料のブロンズ合金は株式会社大阪合金工業所(本社:福井県福井市 代表取締役社長:水田泰成)の特殊製法で製造された加工性に優れた高品質の高スズ濃度(14%Sn)合金を使用した。極細伸線加工は明興双葉の純銅細線加工技術を改良して適用した。

コメント:
今回の開発を主導した物材機構・低温超伝導線材グループの菊池章弘グループリーダーは、「Nb3Sn極細ワイヤーの想定を超える優位な量産性に驚いている。初回試作から7,000mを超える無断線加工ができるとは思わなかった。明興双葉の極細線加工技術の高さとともに、ブロンズ法の複合加工性の良さを改めて実感した。故太刀川先生もきっと目を細めて微笑んでおられることでしょう。」と語っている。
実際に極細線加工にあたった明興双葉・田富工場・技術部の山本優部長は、「今回の成功のポイントは、加工硬化するブロンズ母材を極細線化に特化した最適な中間焼鈍アルゴリズムでした。元材の制限のために今回の最長は約7,000mとなりましたが、極細径での中間焼鈍条件をある程度つかむことができたので、更なる長尺製造は可能と判断しています。」と自信をのぞかせた。

今回、想定より順調に量産規模の無断線製造に成功したことで、次のステージとなる超極細ワイヤーを集合化した撚線ケーブル開発にも既に取り組んでいる。図は、50ミクロン径のNb₃Sn超極細ワイヤーの2次撚線ケーブルの断面写真である。Nb₃Sn超極細ワイヤーの構造は、外側から安定化のための無酸素銅、その内側に拡散障壁のためのニオブバリア、さらに内側はブロンズ母材に19芯のNb3Sn超伝導フィラメントが配置され、その直径は約5ミクロンである。この7本撚りの1次撚線を再度7本で2次撚りした(極細線本数:7×7=49本,Nb3Snフィラメント数:19×7×7=931本,公称最大径0.45mm)。半径20mmの曲率で曲げても、Nb3Snが受けるひずみを0.1%程度に抑えることができる。

図. 50ミクロン径のNb₃Sn超極細ワイヤーを2次同芯撚り(7本×7本)したケーブルの断面写真

(今回の研究開発内容は、2021年度春季低温工学・超電導学会やEUCAS 2021(The 15th European Conference on Applied Superconductivity)などの国際会議で発表を予定しております。)

– 開発会社情報
明興双葉株式会社 www.meiko-futaba.co.jp
銅をはじめとする金属の細線化から、平編銅線や可とう軟銅撚り線などの加工技術を得意とする電気導体の製造・販売メーカー。通信ケーブルや信号ケーブルなど半導体製造装置及び工作機械等に用いられるワイヤーハーネスも幅広く取り扱う。主に自動車業界や産業用機械などの電線・シールド線の製品を供給しており、特にハイブリッドカーのシールド線において非常に高いシェアを持つ。1954年設立。国内4拠点、海外1拠点、従業員数400人からなる。由紀ホールディングスグループ会社。