お知らせ

明興双葉株式会社(本社:東京都中央区 代表取締役会長兼社長:是松孝典 以下「明興双葉」)と株式会社由紀精密(本社:神奈川県茅ヶ崎市 代表取締役社長:大坪正人 以下「由紀精密」)は、従来の実用ニオブチタン(NbTi)合金よりも高温・高磁場応用が実現できる金属間化合物を用いた新しい超伝導ワイヤー開発に取り組んできた。 この度、国立研究開発法人物質・材料研究機構(本部:茨城県つくば市千現1-2-1 理事長橋本和仁 以下「物材機構」)との共同研究の成果として、ニオブアルミ(Nb₃Al)超伝導ワイヤーについて、ジェリーロール法と呼ばれるニオブとアルミニウムの箔(はく)を重ね巻きするユニークな手法で、50ミクロン(1ミクロンは1,000分の1ミリ)線径での100メートル以上の細線化、および単芯構造では最小径となる30ミクロンまでの極細線化に成功した。

図1. 試作に成功した30ミクロン径の超極細Nb₃Al超伝導ワイヤーの断面写真。ニオブ箔とアルミ箔がナノス ケールで竹の繊維状に複合されている。


Nb₃Alは実用NbTiの二倍の臨界温度(約18K)と三倍の臨界磁場(約28T)を示し、さらにひずみによる特性劣化も少なく、次世代の超伝導ワイヤーとして期待が寄せられている。しかし、その結晶構造はA15型金属間化合物に分類され金属のような延性はなく、固く脆い機械特性が実用化の大きな妨げになってきた。NbTiワイヤーが広く実用化されたのも、延性のある合金であるために長尺製造が容易だったり、コイル巻きなどハンドリングがしやすいことが大きな理由である。今回、髪の毛よりも細い外径が100ミクロンを切るNb₃Al超極細ワイヤーの開発で、脆い金属間化合物でありながら合金のようなしなやかさや柔軟性を確保することができ、将来的にNbTiワイヤーに置き換わる大きな可能性が見えてきた。

試作に成功した30ミクロン径のNb₃Al超伝導ワイヤーの細線加工後の断面は、ニオブとアルミがナノスケールで複合されて、それらが竹の繊維のように長手方向に細く伸びていた(図1)。これを熱処理すると、微細なNb₃Al相が生成されて、従来流通しているNbTiやMgB₂よりも高い臨界電流密度が得られることがわかった。50ミクロン径ワイヤーの液体ヘリウム(4.2K)中での臨界電流は、1Tでは10Aを超え、10Tの高磁場でも約1Aを記録した。※1 また、製品化に向けて、80ミクロン径のNb₃Al超伝導ワイヤーの 7本同芯撚り線試作にも成功した。極細線化による柔軟性の向上により、7本の同芯撚り加工後も1本ごとの臨界電流密度を損なわず大容量化できることが確認できた。今後は更に細い径で多くの本数での撚り線、編組開発を進めていく。※2

物質機構 低温超伝導線材グループ グループリーダー 菊池章弘氏コメント
実際に本共同開発に携わってきた物材機構の菊池章弘氏(低温超伝導線材グループグループリーダー)は、「今回の超極細超伝導線の試作成功は、現在のNb₃SnやNb₃Al線の応用や位置づけを大きく変える可能性を秘めた成果。今後、さらに臨界電流密度が向上すれば、長年にわたるこの分野の潮流をひっくり返すことになる。引き続き、慎重に研究開発を進めていきたい。」と語っている。

明興双葉 田富工場に超伝導研究室を開設
研究開発を更に加速させることを目的に、2020年1月に明興双葉 田富工場に超伝導研究室を開設した。

2018年11月の発表の通り、明興双葉の持つ0.05mmという髪の毛よりも細い線を連続的に加工できる量産伸線技術と、由紀精密の持つ製造装置の開発能力を組み合わせ、物材機構の協力を得て、引き続き共同開発を進める。2019年中に試作品を評価し、2020年以降の製品化を目指す。将来的には高エネルギー粒子加速器や核融合実証炉などの大型超伝導磁石、10Kで動作可能なMRIなどの医療機器、さらには、次世代船舶や次世代電気自動車向けの超伝導モーターなど、従来のNbTiワイヤーではまかなうことができなかった各種超伝導応用の加速が期待される。

– 開発会社情報
明興双葉株式会社 www.meiko-futaba.co.jp
銅をはじめとする金属の細線化から、平編銅線や可とう軟銅撚り線などの加工技術を得意とする電気導体の製造・販売メーカー。通信ケーブルや信号ケーブルなど半導体製造装置及び工作機械等に用いられるワイヤーハーネスも幅広く取り扱う。主に自動車業界や産業用機械などの電線・シールド線の製品を供給しており、特にハイブリッドカーのシールド線において非常に高いシェアを持つ。1954年設立。国内4拠点、海外1拠点、従業員数400人からなる。由紀ホールディングスグループ会社。

株式会社由紀精密 www.yukiseimitsu.co.jp
1950年2月、創始者大坪三郎によって創業された金属の精密切削加工を得意とする町工場。現在三代目の社長である大坪正人は、航空宇宙業界の品質管理に対応するためJIS Q 9100〈航空宇宙品質マネジメントシステム〉の取得、ITを使った経営で、経済産業省のIT経営力大賞の受賞など、より高付加価値なものづくりに特化した経営戦略に力を入れている。ヨーロッパの航空ショーで、海外の顧客に製品の精密さを理解してもらうために開発したコマが話題をよび、これまでにNHK、日本テレビ等に特集を組まれている。また、PROJECT Tourbillonがクロノス〈時計雑誌〉に、経営戦略が日本経済新聞に掲載されるなど、由紀精密が関わるプロジェクトは製造業以外の多くのメディアにも登場している。

参考

※1 A. Kikuchi, et al., “Trial Manufacturing of Jelly-Rolled Nb/Al Monofilamentary Wire with Very Small Diameter below 50 microns”, The IOP Conference Series: Materials Science and Engineering, Advances in Cryogenic Engineering, 2020(in press).

※2 A. Kikuchi, et al., “Fabrication of Jelly-Rolled Nb₃Al Mono Filament Wire with Very Small Diameter”, presented at 10th ACASC/2nd Asian ICMC/CSSJ Joint Conference, January 6-9, 2020, Okinawa Convention Center, Ginowan, Okinawa, Japan.